教室の紹介

教授挨拶

 2014年8月1日づけで、岡山大学大学院小児医科学教授および岡山大学病院小児科診療科長に就任いたしました塚原宏一(つかはらひろかず)です。
岡山大学小児科は設立以来約130年となり、東京大学小児科についで2番目に古い歴史と伝統があります。当小児科はこれまで中国四国地域の基幹小児科として、この地域の小児医療を支えてきました。そして、わが国をリードする多くの医師、研究者、教育者を輩出してきました。私は当教室の主任教授としては10代目になります。
 当大学病院では、2012年9月に先進的で総合的な小児医療を目指してわが国で最大規模の「小児医療センター」が設置されました。当センターは内科系、外科系にとどまらずこころの診療まで、「小児医療の最後の砦」として最適な高度先進医療を提供しています。当大学病院では「小児医療センター」や「周産期母子医療センター」を拠点として、小児医療の全領域が充実しています。中国四国地域の中核的な総合病院と綿密に連携しながら、高度医療の実践とそれに関連する医学研究を行っています。
 これからの小児科医は複数の専門資格(たとえば、小児科専門医+新生児専門医+感染症専門医)が求められますが、当大学病院では小児医療の全領域で(小児救急から小児心身医療まで)指導医が存在し、どの医師も熱心に若手の教育に力を注いでいます。若手医師は小児科専門医の次のサブスペシャリティーを自由に選択できますし、同時並行かつ最短期間で、それらの専門資格を取得できます。この教育環境は各人の要望に応じたキャリアアップを効率よく押し進めてくれます。
  日本では小児科専門医の受験者の約半数は女性であり、全国的に小児科志望の女性医師が増えています。岡山県は岡山大学医療人キャリアセンター(MUSCAT)、岡山県医師会女性医師支援事業など、子育て中の医師を支援する体制がとりわけ充実しています。岡山大学病院内には定員90名の保育施設「なかよし園」、小児科専門医が担当する病児保育室が設置されています。当大学病院と診療連携施設では多くの医師が協力しながら、誰でも出産や育児などで一時仕事を中断し、いざという時に休むことのできる柔軟な連携体制を作り上げています。
 現在、岡山大学小児科の医局員は、出産や育児などで一時仕事を中断している方も含めて約40名です。約半数が私も含めて岡山大学以外の大学の出身者です。当小児科への「入局者」は毎年コンスタントに6~10名(約半数が女性)ですが、こちらの数字は国内有数です。毎年、岡山大学病院プログラムにて小児科専門研修(医師3年目に始まります)を開始する方は5名前後、岡山大学大学院(小児医療関連)に入学する方、卒業する方はそれぞれ5名前後です。
 中国四国地域の中核的な総合病院の多くは岡山大学病院の連携施設です。それらの病院の部長・副部長の小児科医師、それぞれ約20名、約10名が臨床教授、臨床准教授として、当院の豊かな教育環境をさらに充実させてくださっています。
 ところで、「成育基本法」は2018年12月に成立、2019年12月に施行された理念法です。すべての子ども、保護者や妊産婦に、妊娠期から成人期までの切れ目のない医療・教育・福祉を提供することの重要性が定められています。医師をはじめとする医療関係者には、国や地方公共団体と協働しながら、良質な成育医療・保健福祉環境を提供する責務があると明記されています。私たちは「小児医療センター」や「周産期母子医療センター」を拠点にしながら、当院ならびに中国四国地域の病院・クリニック・保健福祉施設と一緒になって、すべての子どもとご家族を支援しつづけます。 そして、今後も、若い心をもった優秀な医療者を育てていきたいと思っています。
(2021年7月記)


「岡山大学大学院小児医科学教室および岡山大学病院小児科の現況報告(2023年8月)」
 岡山大学病院および岡山県全体の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応で多くの時間をとられていたこともあり、3年間、続報が出ていませんでした。今回、岡山大学大学院小児医科学教室および岡山大学病院小児科の現況について、報告させていただきます。
 診療では「小児医療センター」を基盤として、先進的高度医療を提供しています。2012年に設置された当センターは小児科、小児外科、小児神経科、小児循環器科、小児血液・腫瘍科、小児歯科、小児麻酔科、小児放射線科、小児心臓血管外科、小児心身医療科が中心になり、院内・院外の多くの診療科・診療部門との横の連携を発展させています。毎年、「小児医療センター」市民公開講座を開催していますが、今年も9月23日(秋分の日)午後にオンラインという形で開催します。多くの方々のご参加をお願いします。昨年8月に重篤な小児患者に対して高度集中治療を提供するとともに、小児救急医療の臨床教育を行う「小児救命救急センター」が設置されましたが、今年度に入ってからもその高次医療機能を発揮しつづけています。
 「周産期母子センター」ですが、産科婦人科と連携しながら、NICU患者の診療にあたっています。現在、NICUはその診療の実態に比して6床しかありません(GCUはなく「新生児室」のみです)。岡山大学と岡山県はこの事態を深刻にとらえていました。周産期母子医療体制のさらなる強化と人材育成を目的として、2024年後半、当院にはNICU 12床、GCU 12床が設置されます。2025年にはMFICU 6床も加わって、現在の「地域周産期母子センター」より「総合周産期母子センター」に拡充されます。
 広島県と福山市による寄付講座である「小児急性疾患学講座」では、広島県福山市とその周辺地域の医療保健福祉を池田政憲特命教授、鷲尾洋介、津下充らが支援・強化しています。今後、小児救急医療・周産期母子医療も含めて、当該地域の小児保健医療体制はますます強化されます。本年4月には玉野市による寄付講座である「臨床小児科学講座」も設置されました。宮原宏幸、福嶋遙佑らが尽力しています。同時に、中国四国の多くの他医療機関・他大学病院との連携や協働もさらに進展しています。
 岡山大学小児科医局に話題を移します。今年度も、栗田佳彦が病棟医長を務めています。そして、引き続き、馬場健児が医局長、長谷川高誠が副医局長、藤井智香子が外来医長、吉本順子が教育医長を務めています。COVID-19の大流行による様々な制約の中で、医局員が一丸となって小児保健医療の「最後の砦」としての責務を果たしています。
 研究面では、各診療グループが高いレベルの成果を挙げています。中国四国の連携施設と協力しながら、小児科同門会として1~2週に1編のペースで英語論文が出されています。トップジャーナルにもいくらか成果を出せるようになりました。海外留学より帰国した栗田佳彦(トロント)、石田悠志(ストックホルム)らが研究面でも牽引しています。今年6月には、小児医科学教授の塚原宏一が周産期医療や小児医療保健に功績のある岡山県内の医療関係者をたたえる「山内逸郎記念賞」を受賞しました。「山内逸郎記念賞」については、すでに、岡田あゆみ、馬場健児、長谷川高誠の3人の医局員が受賞していましたので、4人目の受賞ということになります。
 岡山大学小児科の医局員は、出産や育児などで一時仕事を中断している方も含めて35人程度です。当小児科への「入局者」は毎年コンスタントに6~10人(約半数が女性)ですが、この数字は国内有数です。毎年、当院プログラムにて小児科専門研修を開始する方は5人前後、岡山大学大学院に入学する方、卒業する方はそれぞれ5人前後です。また、皆さまのご支援の賜物ですが、医局員のposition upも進んでいます。1名が教授、2名が准教授(1名は研究准教授)、2名が講師に昇任しました。
 中国四国の中核的な総合病院の多くは岡山大学病院の連携施設ですが、それらの病院の部長・副部長の小児科医師ら約20名が臨床教授、約10名が臨床准教授、約20名が臨床講師、約10名が非常勤講師として、当院の豊かな教育環境をさらに充実させてくださっています。
(2023年8月記)


岡山大学大学院小児医科学教授
小児科診療科長
副病院長(医療安全担当)

塚原 宏一